|
組合長津田氏の説明要旨 
平成7年頃より有線加入者の脱退が増加し、組織存続に危機感を抱き何らかの決断に迫られる状態になった。いろいろ研究や研修を重ねた結果、平成10年にADSLに挑戦すべきという結論に達したが、当時は行政も一般社会もインターネットについてすら理解が得られず国の補助金を受けようとしても厚い壁が存在した。しかも、守山市は当時進行していた「大津CATV」に参画しており、支援を取り付けるどころか逆にADSLへの取り組みを押し留まるように促される状況であった。また、多額の借り入れの連帯保証に対する内部からの突き上げとか難問が山積したが「まずやると決断せにゃ始まらん。」と組合長の強い意志と先見性のあるリーダーシップで決定した。折り良く、当時の森首相の口からIT革命という言葉が飛び出して情報化推進という取り組みについての状況が一変した。それでも補助金はあてにならないので自前を腹の底に持って、農業近代化資金で借入することにして「補助金がもらえたら儲けもんや」と取り組んだ。さすが近江商人の末裔である。早速に60集落に説明して回ったが、ADSLと言うことで若い人の関心を集めたが、お年寄りは「今さらわしゃいらん。」と理解を得られなかった。有線施設はこれまで一度も改善工事が施されておらず機能的な限界に達していた。平成12年に全面改修に入る。それまでの1支局から8支局に増やし2,3キロ以内にエリアをカバー出来るようにして減衰の起こらないストレスのない環境を確保した。本局、支局間は光で結ばれ、支局からは従来のメタルを利用しているが、NTTの線より 太いので干渉もノイズも少ない。採算ベースに合わないところは手をつけない民間企業と違い、60万円もかかる一軒家の架線も地域カバーのために実施している。努力の甲斐あって国から5,590万円、県から1,000万円、市からも1,000万円の合計7,590万円の補助金を得た。手持ちは1億5千万円。残額は利率1.3%、2年据え置き15年払いの借入金。平成13年4月1日より電話が開通、5月1日からインターネット利用開始。電話、交換機等基盤整備に8億、インターネット関連に2億円が投じられた。最初は冷淡だった行政が全面に出て利用を促している。支局をどこに置くかとか、電線の架設で関西電力やNTTの電柱への共架、値上げの噂の流布などの問題も組合長自ら作業服で走りまわって、客先サービスの充実、規制緩和の時流などでクリアーして来た。6回線ある光ファイバーの余っている3本を行政や企業に利用して貰い収益を得たい。安全、安心なインターネット利用、光ファイバーの能力を活かし経営を安定軌道に乗せたい。
  |
SE山中氏の解説要約 
この度の事業遂行に際し難しく感じたことの一つは、事業を開始する当初時において人や地域や団体からインターネットへ対する理解を得ることであった。ADSLに取り組み対し総務省の補助金は事業費の最大20%、有線改善補助金として県、市からそれぞれ固定の1千万円(組合長の説明補足)。学校、市役所のLANとしての利用を期待している。自前プロバイダーはコンテンツサービスに便利であり、これから取り組むのであればメンテを一次プロバイダーに任せレンタルサーバーを活用するのも一手段。専用線の料金、品質を鑑みながらMORIYAMA-NETでは上位プロバイダーへ月110万円を支払っている。トラブル、苦情の窓口は民間プロバイダーのパワード.COMのサポートを受ける。サポートでは年齢に関係ない。加入募集のタイミングに腐心した。常設のデモは3個所で実施して一般市民に体験して貰っている。電話事業では防災 放送、ワンタッチサービス、ユニークな演歌・ナツメロや市内情報等の5つの放送チャンネルを提供している。新規加入は42,000円。守山市からは従前より広報委託料年間300万円を受けている。NTTと同じ番号にしている。子供の長電話でも料金が嵩まないことを売りにして普及の力にしている(組合長)。支局は農協支所の建家を使わず敷地の一部に建家を建てて運用している。光ケーブルの敷設距離は概ね2万メートルである。守山市は縦横12km×4kmの面積の地形である。職員は放送3名、保守3名、庶務4名、インターネット2名。ネットの為の新規雇用は1名であった。岩通が工事を担当、組合長の地元に関西営業所を建てさせた。その岩通のDSLサービスについてのプレゼンを抜粋します。DSLの導入により期待できるサービスは、有線加入者間で生活の一部としてDSLの利用が実現すると定義し具体的には、情報交換手段、大容量の通信手段、今後のサービス拡大の三点を上げている。大容量の通信としてのDSLの活用においては、将来、映像の送信を示唆している。双方向の通信が実現することにより、医療・福祉(介護医療サービス)への活用、老人世帯のケアー、病人の様態確認などが考えられ、また、防災情報、緊急連絡網への活用により地域ごと相互に役所と住民が情報を共有できると生活基盤の強化を謳っている。インターネット教育、生涯学習、行政の情報掲示、公共施設予約、図書館の貸出予約の利用構想を提示している。デジタル交換機をアメリ カ・ルーセント社から導入した経緯は、国産機だと電話番号が局番2局の6桁しか管理できないので7桁まで利用できる米国製を選択したという逸話を披露いただいた。カバーを開けて中まで見せて戴いた。有線電話番号とNTTの番号と同じにしているところに興味を感じた。中央大手建設会社のマンション建設の際に設計段階での食い込みでNTTに遅れをとることが多いことが痛いとのこと。干渉の問題を理由に同じ配管を使わせてもらえない。地元業者の場合は十分に対応できている(組合長)。1年はメンテを委託していたが現在は自前で行っているとのことでシステム・ルームの各種機器も作動状況を見学できた。現在は1.5Mbであるが6Mbまで対応可能。社会的に問題視されているダイヤルQ2には繋がらない安全性を普及の売りにしている。帰り道の守山駅に置いてあるデモ機で体感したが全くストレスを感じさせないパフォーマンスでした。スプリットを取らないでしまいました。マンション等の都市部に対し高速無線LANは考えてないかと質問したが、明確ではありませんでした。また、ネット放送局などコンテンツの開発はまだサービス開始1年半なのでこれからの取り組みとのことでした。
  |
視察所感 
MORIYAMA-NETに対して、インターネット黎明期において孤立無援の中、孤軍奮闘して勝ち得た成果であると賛辞を贈りたい。先見性と決断力のあるリーダーと知的で冷静沈着なエンジニアーのコンビネーションの存在と折しも挙がった国家的IT革命の掛け声が不可能を可能に変えたと感じました。しかし、この急激な技術革新の時代に15年の借金返済はリスクが大きいのではと心配します。守山市の場合は経過から仕方ないのかもしれませんが、行政、産業界の関わりが希薄であることが気になります。IT革命、e-japanを唱えながら伝送路の確保に明確な指針を打ち出していない政府の対応、体制に危ういものを感じます。また、補助金を得て他を凌駕しようとする姑息な了見の活用でなく、補助金活用の成果が他の組織にも運用できるメリットを生み出せるものでなくてはならないとする意識の改革が必要と感じます。例えば、伊那市RAN(Region
Area Network)構築の際に使用した20万円のルーターが平成11年にはであったが、平成13年には10分の1の2万円になっていて、補助金がなければ初期導入のリスクを背負うことになっていたと言う事例もあります。多くの試行錯誤によって安全、安定の方向性が定まる道筋が構築されるための補助金であって欲しいと思います。ADSLは一般道が高速道に切り替わる様なものですから社会基盤が総入れ替えになるようなものと考えるべきです。そのインフラ整備の巨大なリスクを一つの農協のみに担わせたり、経済効率優先の民間企業に期待していても先に進まないことは誰の目にも明らかなことです。地方の時代、地方分権と叫ばれて久しいのですが、今こそその自立した自治確立のチャンスが到来したと考えるべきです。地方自治体において自前の光ファイバーのLANを構築し、その拠点から有放のメタルを利用してネットワークを形成する。有放はその回線をレンタルする事で巨大投資のリスクを避け、また、行政は他の回線も地元企業に解放し産業振興に活用し、なおかつ、投下した資金回収を早めることを図ることができます。国からの頭ごなしの情報管理からも解放されます。情報活用の容易なところに企業が進出する時代となることは目に見えています。その逆なら去っていくでしょう。情報を制する者が世界を制すると考えます。今こそ決断の時です。自治体合併など姑息な手段です。情報化が自治体の垣根など取り払う時代は目の前です。今回の守山市の事例では商工会が果たした役割は見受けられませんでしたが、今後、インターネット放送等のコンテンツを充実させて行く中でマスコミに対するミニコミのコマーシャル分野の運用面で地域経済活性化の起爆剤となり、収入面でもMORIYAMA-NETの経営面の助成になるものと思われる。国は小さくても強い政府を標榜し電子自治体を望むからには、隈無い伝送路の確保は至上命題です。単独農協組織での光ファイバーとDSLの結合したネットワーク構築の快挙を目前で確認出来たことはこの度の視察の大きな成果でした。
視察報告追伸 
京都からJRの快速電車に乗り30分足らずで滋賀県守山市に着いた。江戸時代に近江商人が紫波町に酒造りや養蚕の技術を伝えて商業の隆盛をもたらし、南部杜氏の発祥の礎を築いたと言われており深い縁で結ばれているのが近江の地である。駅前は清楚なたたずまいを感じた。時間があったので市内を散策しながら歩こうと言うことになったが、そこで素晴らしいものを見つけた。その一つは太陽電池パネルと蓄電装置をを備えた歩道用の街路灯である。それに車道は狭めで歩道が広く5mmほどもある様に見えました。自転車は歩道を通っていました。もう一つは、ほたる商店街とか蛍橋とか蛍に関わる表示が多く見受けられ、道沿いにとても澄んだ水量の多い用水が流れていて清潔な街の印象でした。帰り際、守山駅の市役所インフォーメーション・コーナーで質問したら、環境が悪化して源氏蛍が絶滅状態となったが市民の努力で最近は市内に乱舞するまでになったとのことです。そこ の案内所は正月以外年中無休で開いているそうです。
この日の京都のホテルで配られた朝刊にとても興味のある記事が載ってました。「京にネット放送局」という見出しで京都の観光情報などをネットを通して動画や音声で紹介するインターネット放送局Broad.TV KYOTOが試験開局するというもの。「テレビと違って、ネットなら自由に表現でき、コストもかからない。地域探検など面白いドキュメントタッチな番組を作りたい。」とディレクターのコメント。スタッフは22歳から34歳の6名。ブロードバンドの急速普及に着目してのチャレンジ。この度の視察に大いに関わる内容でもあり、日頃からの私の関心事であります。TV.ドメインを使用しているところも興味を持ちました。ちなみに私は「IWATE.TV」と「SHIWA.TV」などドメインを取得しています。同じ紙面に「ネット利用世帯初めて半数を超す」の記事もあった。1世帯当たり利用者数は約1.92人。推定利用人口は約4,621万人と、この一年で約1.4倍に膨らみ、若年層や職場を離れて自宅でのネット利用が一段と一般化してきたことが裏付けられたとしている。また、若い世代のネット利用は携帯電話の普及もあり、女性上位の傾向だそうです。京大、桂キャンパス建設急 ピッチという記事の中に学内通信網を、インターネットの次世代の接続形式として研究競争が盛んになっている「IPV6」の実験施設として活用すると報じている。この時、この場所でこの機会を得て、この興味ある記事満載の新聞を目にすることが出来たことにドラマチックなものを感じました。視察も良いけど先進地の古新聞を1ヶ月ごとに送ってもらい参考にするというのも良い情報が見つかるのではないかなと思いました。飛行機に乗った折りに、岩手の緑の多い景観と大阪の家並みだけ景観の違いに唖然とするものがありました。今後、ネットを活用すれば経済的ハンディをカバー出来るかも知れませんが、環境、自然を取り戻すことは容易ではと負け惜しみの口実を考えました。また、客室乗務員の笑顔を絶やさない応対にマニュアル化はしていても商売の原点を見ました。久しぶりに外界に出ていろいろな刺激を受けました。貴重な機会を戴いたことに感謝を申し上げます。
|